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《 既存建築物の耐震診断 》

新耐震基準法施行前に確認申請を受領された建築物について


建築物の真に正しい耐震性を知るには
基礎から内部・外部を含め、全ての構造体部分を現地確認し、設計図書全ての精査や耐震
計算はもとより建築物の固有周期・振動等の測定及び地盤の分析など行うことが必要となる。

さらに、その建築物がある地域において今後どの程度の震度でどのような振動を起こす
地震が発生するかを明確にすることが重要。

しかし、現実にこれらを全て実行するにはそれ相当の期間と費用を要することとなり、
まして今後その地域で発生する地震状態を完全に特定することは、地震関係の学会等でも
不可能であるのが実情である。

そのため、実行しうる期間と費用において、現地調査・診断方法及び地震状態等を基準化
した『 耐震診断基準 』(種類がある)が作られ、それに準拠して建築物の耐震性能の
判定を行う形を取っている。
あくまでも建築物の耐震性能を簡略的に評価することを目的に開発された診断手法である。

このことから、前提として耐震診断は真に正しい耐震性を追求している訳ではなく、
個々の建築物の耐震性能を想定し予想していることとなる。


日本中の建物の内、どの程度の耐震性を持った建物がどのくらい存在しているのか。


耐震診断は、耐震基準に準拠して行うものであるが、異なる診断者や計算者が同じ建物を
同様に準拠しつつ診断したとしても、その建物の現状と構造的の見方・モデル化等の設定
及び手計算や計算ソフトウェア、メーカーの違いにより、算出したIs値等の値が完全に
一致することはほとんどないと言っても過言でない。

しかし、耐震診断判定においては、まずIso値とIs値の比較よって判断はするが、
最終的なコメントとしては、平成7年12月25日付 建設省告示 第2089号における
3つの区分文章が判定結果となる。

それは、
地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が
 @ 低い A ある B 高い の3つの表現である。

よって、判定結果のIs値等の数値が多少違っていても最終判定の結果は、耐震基準に準拠
していれば変わることがないはずである。

但し、文部科学省の文教施設−小中学校等の校舎・屋体の耐震診断結果は、
@ 耐震上問題なし A 耐震補強 B 改築 の3つに分かれる。
また、Iso=0.7を基準としており、文部科学省 独自の評価・判定内容となっている。



耐震診断の計算ソフトウェアつまりプログラムは、耐震基準に準拠し全ての建物に一貫した
形での完全なプログラムの作成は不可能でないにしても、今だ実現性は低い。
つまり、現在においては全ての建物にあった耐震診断用計算プログラムはないと言うこと
大前提である。

そのため、診断用計算プログラムの結果がそのまま耐震改修後の耐震性評価に利用される
ことは想定外であることである。

さらに、耐震診断基準も建築物の耐震性能を
簡略的に評価することを目的に開発された診断手法であることも前提にある。



このことより耐震診断判定委員会では、耐震補強に関わる部分について参考としてサービス
的にそれら関連内容についてのコメントや意見は言われるが、責任は持たないこととなって いる。

よって、耐震診断での補強方法はあくまでも一つの提案であり、耐震改修設計時において
その設計担当者による考えのもと、耐震診断報告書を参考にさらなる検討や再計算等をし、
別の補強方法を試みて一番建物の現状や実情に合うように設計することが必要である。


また前述などより本来、耐震診断の計算プログラムは、途中経過を検討する等部分的に有効
利用するものとなっている。

そのため、耐震診断講習会等でも再三において出来るだけ広く対象建物に関わる情報を収集し、
それらを基に総括的な診断の考え方と工学的な判断を前提に常に思考されることや経過
状況がわかりやすい等の理由により、出来れば手計算で行う方がよいとも述べられている。
しかし、現実的には期間と費用及び技術者の選定等に限界があるため、どうしても耐震診断
   の計算プログラムを使用することとなってしまう。

よって、総括的な診断の考え方・建物のモデル化・計算内容の再確認・耐震性能等の判断・
結果の解釈など、考察・思考する部分が耐震診断においては重要であり業務全体から見て
判定精度に関わるウェイトが高い



耐震計算部分においても、構造計算の表現や手法等も個々の技術者によって多少違うのが
当たり前のため、耐震診断判定会の判定委員は総括的な診断の考え方と判断部分を重点的に
質問しつつ、その内容が報告書や耐震計算等に反映されているか否かの確認が必要として
行われている。
このことから、耐震性能上の考え方や判断が正しければ、耐震計算の数値結果よりもその
内容が優先されることもある。

例えば、Is値が高くても柱の強度が低く靭性破壊となる柱が同じ階に多数存在している
場合などは、数値だけの判定では問題なしとなっても実際の地震においてはそこに大きな
変形がかかりそれらの柱が一度に壊されその階が倒壊する可能性が予測される等。

計算上のシュミレーション状況と現実建物状況の比較の例として、屋体等の軸ブレースが
中間高さ位置にあるコンクリートのギャラリーを貫いて設置されている場合、計算上では
   軸ブレースが地震に耐えられない結果だとしても、現地のギャラリーとの取合部に隙間や
割れ等の損傷がなくしっかりと固定されている状況であれば、軸ブレースの座屈の度合い
が減少するため、この軸ブレースを全て交換せずにガセットプレートと柱との接合部位を
補強することで耐震上有効に働かせる等の考え方等。


上記の状況等は、耐震計算上の数値等では表現することは出来ないので
それぞれの計算結果の数値や計算経過の前後の状況等を踏まえ、
現実的な建物の状況判断において考察・判断されることとなり報告書へ記述される。


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